時代の詳細は記されず、
ただ、“儀式の前夜に入れ替えられた神子がいた”という記録のみが残されている。
彼女は病弱にして、地脈の揺れに耐えられぬ身体であった。
家は焦り、同じ顔立ちを持つ妹を密かに入れ替え、
騎士には何も知らせぬまま、契約の儀が執り行われた。
騎士はその日、
“いつもと違う笑み”を浮かべる神子に、違和感を覚えたという。
だが儀式は進み、契約は果たされた。
真実を知ったのは、その数ヶ月後。
本来の神子は床に伏し、
すり替えられた妹は、必死に“神子”を演じつづけていた。
やがて、彼女は耐えきれず、
自らすべてを語り、
こう言ったという。
――「あの人にだけは、嘘をつきたくなかった」
騎士は激怒し、家を問いただし、
真の神子のもとを訪れたが、彼女はすでに、
“ただの少女”として生きることを選んでいた。
その後、神子制度において「血統の同一性」を理由に
“顔の酷似”だけでは任を果たせぬという指針が密かに追加される。