神子として選ばれし少女は、

地脈を背負う“器”としての運命を告げられたとき、

ただ静かに、首を横に振った。

その夜、家の者の目をすり抜け、

彼女は身ひとつで屋敷を抜け出した。

逃げた理由は、誰にもわからない。

ただ、彼女が残したひとことが、後に記録されている。

――「私は、私のまま、生きてみたかっただけです」

彼女は街へ下り、別人として働き、

つかの間の“自由”を得ていたという。

けれど、地脈に選ばれた魂は、

そのままではいられなかった。

彼女の周囲で、微細な地震や異常が相次ぎ、

“湧き地”と呼ばれる異常地脈が発生。

咎人が生まれ、混乱のなかで彼女は再び見つかった。

そのときには、もはや“神子”として戻るには遅く、

地脈に蝕まれ、命の灯が尽きかけていたという。

発見時、彼女は廃寺の鐘の下で膝を抱え、

静かに空を見上げていた。

――「生まれ変わったら、ただの村娘になりたいな」