東の地に青龍の気配満ちし頃、
ある村にて、神を祀る社に仕える巫女がおりし。
この巫女、東宮寺本家の分家筋に生まれし者なれど、
本家との関わり浅く、幼きより神事の家に育つ。
名は記されず、ただ“巫女”と呼ばれしその少女は、
日々、祈りと舞を捧げることを己の務めと心得ていた。
やがて、巫女の捧ぐ舞は空の龍の心を動かし、
夢に現れし青龍、言葉をかけたという。
――「その魂、我が伴侶とせん」
巫女、困惑すれども返す。
――「神に愛されることは誇りにございますが、
私は人でありましょう。どうか、お引き取りを」
これを聞きし龍、少し拗ねたる様子を見せしも、
その後も巫女の夢枕に現れ、ただ静かに見守りつづけたという。
それより、神社の地に加護の気配満ち、
地脈の揺らぎ治まり、社の拝殿に青き光灯る。
人々これを“龍の加護”と称す。
この話、東宮寺本家の耳に届きしとき、
家主たいそう驚き、小躍りしたと記録される。
――「分家筋にこのような者がいたとは!」