春霞の頃、咲き誇る白椿の庭にて、
ひと組の神子と騎士が、密やかに想いを育んでいたという。
西家の神子は、心優しくも寂しがり屋であり、
騎士は朗らかにして真面目、彼女を誰よりも大切に想っていた。
ふたりの在り方は、誰の目にも理想的であった。
だが、それは“制度”の目から見れば、
あまりに近すぎる、危うい関係でもあった。
ある日、神子が儀式の最中に精神を揺らし、
その心に芽生えた強き想い――すなわち「騎士を独占したい」という願いが、
地脈を通じて神力と共鳴し、抑えきれぬ力と化した。
彼女は自らを“器”と認識できなくなり、
騎士との関係が“想い人”としての執着に変わった瞬間、
制御を失い、咎人と化した。
騎士はその場で彼女を止めようとしたが、
神子は彼を認識できず、己を傷つけ、
最後は地脈に呑まれて消え去った。
騎士はすべての責を負い、
後を追うように命を絶った。
この出来事は、四家に激震を与えた。
「神子と騎士は、互いを想い合ってはならぬ」