星灯りの下で ― 蒼龍の章 ―

金魚すくいの水音と、綿あめの甘い匂いが混ざる、夏の夜。

灯籠の灯りがゆらゆら揺れる中、神社の参道は人で賑わっていた。

「……蒼子?」

群青の静かな声が、夜風にかき消されそうになる。

さっきまで手をつないでいたはずなのに――蒼子の姿が、ない。

彼女が何かに気を取られた拍子に、群青の手を離れてしまったのだ。

「蒼子……!」

鼓動が、少しだけ速くなる。

子どもの頃から沈着冷静だった群青でさえ、幼い蒼子が一人で人混みに紛れてしまったことには焦りを隠せなかった。

(あいつ、こっちの注意も聞かずにはしゃいで……)

叱りたい気持ちと、無事でいてくれという祈りが交錯する。

提灯の灯りを一つひとつ確かめるように、群青は屋台の間をすり抜けて進む。

ふいに、遠くから聞こえた。

「……ぐんじょう、どこー……?」

泣きそうな声。間違いない、蒼子だ。

声のほうへ駆け寄ると、金魚すくいの奥、薄暗い境内の端で、しゃがみこんでいる蒼子の姿があった。

目には涙がにじんでいて、浴衣の裾を握りしめている。

「……ばか」

群青はひとことだけ言って、彼女の手をぎゅっと握った。